スポーツ ボクサーショーツ

製品設計部からお届けする、製品の開発ストーリー。
今回はスポーツボクサーショーツについてお話しようと思います。
今回の構想に至ったのはふとした気づきからです。
ウェア業界にいる中で、インナーやアウターがメインとした商品構成が多く、スポーツを行う際必ずと言っていいほど着用するアンダーウェアについてはあまり意識したことがなかったということに気が付きました。
運動時、体力を大きく低下させる汗冷えが大敵となります。
アンダーウェアはパフォーマンスに重要な身体のコアとなる部分に接するものだからこそ、快適な着用感で素早く汗を吸い取り身体を冷やさないようにしなくてはなりません。
そこで今回のコンセプトは快適で身体にピッタリとフィットし、汗蒸れ・汗冷えを防ぐ、毎日着用したいボクサーショーツです。

今回、素材は3つの吸汗速乾素材を組み合わせた仕様にしました。
身頃全体には、少ない力で全方向に伸びて素早く回復する高いキックバック性を持った素材を採用しました。クロッチの裏面部分にはとても柔らかな立体ハニカム構造のメッシュを使用し、透けを防ぎ優しく包み込みます。そして立体ハニカム構造により肌への接地面を減らし、汗冷えを防ぐ特殊な素材です。
裾部分には捲れ上がりを防ぐため、メッシュではなくソフトでしなやかなトリコットの切り替えを配置しました。
素材決定では、素材の組み合わせを変えたサンプルをいくつも作成し、着用テストを繰り返した中でこの素材の組み合わがベストであるということが分かりました。
素材特性については詳しく商品ページにて記載をしていますのでご覧ください。

面積の小さいアイテムほど(フェイスマスクなど)繊細で緻密なデザインと設計が必要です。数ミリ寸法を変えるだけで大きく変わってきます。
このボクサーショーツは脇が一続きのため縫製箇所が当たらず快適な分、パーツ数が少なくなるためパターンの形状で着用感が大きく変わって来ます。
そこでパタンナーと傾斜角まで細かく調整を繰り返します。
前股ぐりと後股ぐりの寸法の前後差について説明します。
前後差は、大きく付けすぎるとヒップ部分が余ってしまいフィット感を損ね、逆に前後差を減らすとピッタリとする分運動量が減ってしまい、屈んだ際にお尻部分が食い込んだりウエストゴムが下がってしまう状態になってしまいます。
一番最適で快適になる寸法を探し出していく作業を繰り返します。

マチ部分は、頂点部分に向けたダーツを取りました。
図中の緑○部分あたりを頂点としてパーツのハギ位置で傾斜を取ることでダーツが生まれます。
ボクサーパンツは、前中心のマチが左右2パーツに別れていることも多いですが、厚みのあるメッシュを2枚重ねしているためパーツ数を増やして生地が重たくならないように考慮しました。パーツ数を減らしながらも立体構造を確保するため、縫製すると真っ直ぐに見えるこのU字部分には大きくカーブを取ったパターンになっています。

マチは股下部分からヒップにかけて広く取っています。
ヒップ側に広くマチを取ることで、ヒップ中心部分の食い込みを抑える役目を果たします。
ここでヒップ側に取りすぎてしまうと次は身体に沿うのが難しくなるため、最適な幅に設定しています。
マチは緩やかな前振りとなっており、歩行時や座った際の前に向かう脚の運動を考慮して設計しています。
ウェアを上から着用した際の捲れ上がりを軽減するために設けた裾の切り替えは、内股のマチまでで止めてマチ部分で縦の切り替えラインと合流する形状となっています。
理由はぐるりと横の切り替えが太腿に走ってしまうと着用した際に脚周りに膨張感を与えてしまいスタイリッシュに見えなくなってしまうためです。
このデザインの細かなディティールがスリムでスタイリッシュに見える肝となっています。

縫製は肌あたりを考慮してそれぞれ異なる縫製仕様にしています。
クロッチとダーツ部分は縫い代がフラットで伸縮性と柔軟性に富んだ2本針ミシンを使用し、補強のためカンヌキを打っています。
裾の切り替えは異素材同士の縫製部分のため強度が高くフラットな縫製のフラットシーマミシンを使用しました。
糸は2本針ミシンにウーリー糸という少し膨らみのある糸を使用し、フラットシーマミシンはスムースな糸を使用しています。
縫製方法1つにもステッチの幅や糸の選定によって見た目や着用感に大きく影響してくるため、細かく慎重に決定していきます。